工房閑話
退屈ということ
この仕事をしていると、時々思い出すことがある。
大手航空会社に勤める知人から聞いた、入社間もない頃の空港勤務の話である。曰く「空港のカウンター勤務は退屈で、もてあましてしまう。そんな中、オーバーブックがあると、俄然やる気が湧いてくる」と。詰め寄ってくる大勢の客を必死になだめる職員の姿が目に浮かんでしまうが、若者にとっては仕事に手応えを感じる瞬間なのだろう。
ビザ審査に当たる領事はどうだろうか。日々モニター上のDS160に目を凝らし、その他の似たようなパターンの書類にも目を通し、ウンザリすることがあるかも知れない。Eビザと云えども、例えばT社の社員が米国法人にマネージャーとして出向する場合、目をつぶっていても許可されるし、サポートレターなども必要ないだろう。審査しても、面白くも何ともなさそうである。少なくとも好奇心を駆り立てそうな中身は思いつかない。一方、個人起業家や、214bによる再申請ともなると、領事魂に目覚め、細部にまで目を凝らすことも厭わないエネルギーが湧いてくるようだ。フレンドリーな笑顔から峻厳な審査官の顔になる。
申請する側からすると、できるだけ平穏に、退屈なままで済ませてもらいたいのだが、弊所では領事を刺激するケースの割合が圧倒しており、今のところ退屈に悩まされる気配はない。
2016年10月5日