< 工房閑話 サイパン帰行 >


5.サイパンのビザ事情


 2009年に米国移民法適用が開始され、事務的な手続きで済むビザから、厳しい要件が求められるアメリカのビザに移るということは、当事者にとっては深刻な問題である。実際、ビザ申請のために日本に帰国したまま、サイパンに戻れなくなった人も少なくないと聞く。
 これまで数多くのサイパンで事業をされている方の申請の手伝いをしてきたが、現地で得た情報も合わせて、このテーマを整理してみた。そこからは、アメリカのビザの普遍的な課題をサイパンと云う角度から垣間見ることができ、興味深い。


CWビザ
 今回の旅でも、いろいろな人からビザの相談を受けたが、移行期の特別措置であるCWビザが存続する限り、さほど大きな問題はないように思われる。「この措置の期限が本年12月末に迫っており、その後はどうなるのか?」と云う懸念があり、中国人は概して楽観的にとらえ、日本人はやや心配しているふうであったが、2019年まで延長されることが発表された。

 米国労働省2014年6月3日付ニュースリリース

 これなくして、サイパンの経済は成り立たないであろうことは、我々の目にも明らかであり、極めて現実的な措置だと思う。
 CWが比較的簡単にとれることは知っていたが、驚いたことに、ほとんどの申請者が専門家の手に拠らないで、自分達で移民局の許可を取っている。移民局申請は、通常、移民法弁護士に依頼する。それでもH1B, L 等のビザについては楽観できない状態が続いており、このことからもCWというビザが移行のための特殊なビザであることが良く分かる。

 

Eビザ
 CWは易しいとは云いながら、5年後は不透明である。また、有効期限が1年と云う使い勝手の悪さもあり、事業家としてはEビザが欲しいところである。しかしEビザとなるとCWのような寛容な審査は期待でない。通常その有効期限が5年であるのに対して、中規模以下の企業が主流を占めるサイパンに於いては、1~3年の許可が下りるケースが多い。これには明らかに暫定許可的な意味合いがあり、その更新手続きは、通常の5年の許可得た場合以上に慎重に行わなければならないが、サイパン滞在中数人の方から相談を受け、この問題についての関心の高さを実感した。
 今回お世話になったF氏は5年の許可を獲得している。総合的に見て1~3年の暫定許可が出ている企業の規模を上回っているとは言い切れないなかで、何故5年が出たのだろうと云う問いに答えを出せないでいたが、前述のホテルとの交渉にその回答を見出した。要は「Eビザカンパニーとして健全な経営ができることを、領事に納得させた。」のである。「なんだ、そんな事か。」と思われるかも知れないが、潤沢な投資が無い場合に「健全経営が見込める」ことを納得してもうためには工夫と努力が必要である。面接での質疑応答も大きな意味を持ってくる。いくら良い書類を準備しても、面接に於いて、提出書類を見れば分かる事も聞かれる可能性があり、また質問に対しては自身の言葉で語らなければならない。さらに「領事の疑問(あるいは疑惑)を解かなければならない場面もあるかも知れない。実際、F氏によると、かなり緊迫したやりとりがあったようである。この点はサイパンの企業に留まらない、Eビザの本質そのものであると思う。

 

Bビザ
 特に仕事はしないが、サイパンでのんびり長期滞在したいと云う希望を持っている人も少なくない。米国移民法導入はこう云う人達にとっても頭の痛い問題である。Bビザ申請に際しては、まず申請内容が許可されるものかどうか慎重に検討し、見極めなければならない。なにしろ、もしビザが許可されなかった場合は、ビザなし渡航も不可になることを覚悟しなければならないからである。


 

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