< 工房閑話 サイパン帰行 >
7.サイパンの阿波踊り
サイパンの子供たちの阿波踊りを見に行った。丁度「Saipan Flame Tree Festival」が開催中で、F氏が理事を務める文化交流促進NPOの活動の一環として、子供達のチームが出演するらしい。日没前の海はまだ明るく輝いているが、松の樹に覆われたビーチロード沿いの公園は、ステージの証明や夜店の灯りに照らされ、地元の人で賑わっていた。F氏は子供達の付き添いに向かう前に、私を一番前の席に座らせた。周りの人に詰めてもらい、スペースを作ってくれたのである。如何にもF氏らしい。間もなくB氏が家族連れで来てくれた。奥さん、息子さん、娘さんである。女の子はそうでもないが、男の子は子煩悩のB氏を、やや持て余している風で、それがまたほほえましい。
子供達の踊りには驚かされた。東京人が喋る大阪弁くらいに考えていたが、なかなかどうして、ちゃんと阿波踊りになっていた。あの2拍子のリズムに乗った独特の踊りは、単純な動きであるだけに、それらしく踊るにはかなりの年季を要する。子供達の表情も良かった。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら・・・」である。
まだ、私が小学校に上がる前、お盆には、叔母の三味線の「よしこの節」に合わせて、従妹二人が踊りながら街を練り歩いていた。そんな記憶が蘇ってきた。洗練された昨今の阿波踊りもそれはそれで見事だが、この素朴さも案外贅沢である。
思いがけずサイパンを再訪する機会を得て、いろいろな人との出会いに恵まれたが、これもアメリカビザが取り持つ縁に他ならない。勿論、苦労が無いわけではないが、人の役に立てているという手応えは何物にも代え難い。その思いを確認しながら、サイパンの阿波踊りに拍手を送った。