工房閑話
日本の非効率「ウサギ跳び」から卒業を
2016年4月28日の朝日の朝刊に、標題を冠した社会学者小熊英二氏の論評が掲載されていた。論旨は「我が国に於いて、ウサギ跳びの如く、見当違いの無駄な努力が社会の活力を削いでいる。」というものである。最近の調査結果に拠ると、日本の労働生産性は米国と比べて随分低いそうである。行き過ぎた効率至上主義もどうかと思うが、アメリカ人より日本人の方が一生懸命働いているような印象があるので、これには少なからず驚いた。しかし小熊氏の説に目をやると大いに思い当る。例えば、私の知る限り、確かにアメリカ人の方が、仕事に対する集中力が高かった。仕事を時間内に収めようという意思が見えていたのである
この問題は、我が同胞の「能動的に行動することが苦手」な特性にも関係しているように思われる。とにかく「お任せ」してしまうのである。これが絶対的に悪であるということではないのだが、例えば、政治に於いてはすこぶる具合が悪い。ビザ面接に於いても然り、最近の事例では、Eビザ管理職で申請しながら、質問に答えられず管理職としての知見を疑われ不許可となったケースがある。申請者自身がお任せで、担当した弁護士事務所からもアドバイスがなく、無防備で面接に臨んだ結果だった。幸い、再申請を引受けた同業者の活躍で許可されたが、運が良かったと云える。我々は、面接の心構えについては、特に入念に説明するようにしている。想定質問に留まらず、申請の考え方を理解し、応用問題にも対応できる準備が必要と考えているからである。しかし、申請者に直接ではなく、会社の人事等を介するケースもあり、この場合はどうしても緊張感が薄まってしまうが、最近の興味深い事例がある。申請方針の策定、その根拠の確認等の作業を共有した結果、申請内容を完璧に把握して面接に臨み、領事の非合理的な見解に敢然と反論し、無事許可されたケースである。アメリカビザに於いて、「お任せ」は禁物である。また、入念な準備は見当違いの努力でもない。