工房閑話

 

 

“at-will employment”について

 現政権の経済政策の一環として、「国家戦略特区」構想が報じられていますが、その中に日本版“at-will employment”があります。「解雇特区」などと呼ばれていますが、導入反対意見が優勢で、事実上廃案になりそうな形勢です。


 アメリカでの雇用関係は“at-will employment”の思想に基づいていると云われており、「自由意思に拠る雇用」と、日本語には馴染みにくい言葉ではありますが、「被雇用者は自由に雇用先を選び、辞めることができる。同時に雇用者は違法でない限り、理由を問わず被雇用者を自由に解雇できる」という考え方です。
一見労使双方に公平な構成になっていますが、我々日本人からすると、どうしても簡単に首切りができる、雇用者の側に立ったものに見えてしまいます。とは言え、それが野放しになると社員の労働意欲にも影響し、雇用者にとっても得策ではなく、国力の衰退を招きかねません。実際、違法な解雇かどうか(例えば人種、宗教、性別、年齢、国籍、妊娠による差別の有無の検証等)について、訴訟になった場合、特に近年、司法当局は被雇用者に有利な判断を示しています。
未だバブルの名残で、米国に於ける日系企業が威勢のいいころ、駐在員(総務マネージャー)を対象とする弁護士事務所による労務セミナ(特に解雇に係るテーマ)が大盛況でした。「営業は何とかなるが、アメリカ人を相手にする総務案件は、日本を引きずっていてはどうにもならん」と云うわけです。一方移民法は、1986年の改正により雇用者側の法的責任が強く問われることになったものの、当時、兄貴分であるアメリカの懐は深く、諸事大らかで、ほとんど関心を払われていなかったようです。


 ここにも時代の流れを感じますが、この“at-will employment”という考え方は、「銃規制反対」同様、深くアメリカ社会に根ざしており、アメリカビザを申請するに当たって、特にサポートレター作成に際しては、押さえておくべき要素であるように思います。

 

 

 

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