工房閑話

 

 

 

アメリカの矜持

 

 米国を訪れたイスラエルのネタニヤフ首相が、去る7月24日米国の上下両院の合同会議で演説を行った。共和党の議員達が、これにスタンディングオベーションで応えた。

 

 イスラエルのガザ攻撃は全てのパレスチナ人を殺戮することも辞さない構えで、ジェノサイドの様相を呈している。ユダヤ人抹殺を図ったナチスの行為に対して、この言葉を充てたのはユダヤ人であるが、歴史の皮肉というべきか、およそ100年を経て、今度はユダヤ人が同様の行為をパレスチナ人に対して行っている。

 

 イスラエルは世界中から、ロシアのウクライナ侵攻を凌ぐ非難を受け、さらにネタニヤフ首相のガザに於ける非人道的な行為に対しては、ICC(国際刑事裁判所)の検察局が戦争犯罪容疑で逮捕状を請求している。そのイスラエルを、アメリカ国民の代表たる議員の半数が、これ以上は無い公の場で、あからさまに称賛しているのである。さすがに、残りの半分の代表たるバイデン政権は和平に向けて力を注いでいるが、イスラエルは一顧だにしない。しかるに、アメリカはイスラエルへの武器供与を継続し、その額は1兆円にも登ると云う。

 

 あらためてユダヤ人社会の力の大きさを思い知らされているが、アメリカ政府に対する影響力について、試しにCHAT GPTに尋ねてみた。「複雑で多岐に渡ります。」と云う前置きで答えてくれたが、残念ながら格別これと云って真新しいものは無かった。ただ、厳然としてその力はアメリカが矜持を護れないほどに大きいのだろう。かつて毛沢東がユダヤ人の人口を訊ねて、その影響力に比べてあまりの少なさに驚いたという話を聞いたことがある。

 

 数年前、日本の外相が「効率的な外交のために専用機が必要」と主張したことがあったが、問題はそこではないだろう。成果は出ていないが、和平に向けて東奔西走する国務長官の激務には瞠目する。果たして、この弱肉強食とでも言うべきグローバルな政治の舞台で、日本の外交が通用するのかにも思いが巡ってしまうが、まずは11月の大統領選挙によって、アメリカの軌道が修正されることを願って止まない。

 

 

 

                            2024年7月29日

 

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