工房閑話
最敬礼
テレビのニュース映像に釘付けになった。繰り返される不祥事に対して厳重注意文書を手渡す国交省航空局長に、JALの社長が腰を曲げ深々と頭を下げている図は、数十年前の記憶を呼び起こしてくれた。
軍隊にとって規律は重要な位置を占めている。その第一歩として、自衛隊員は敬礼の作法を徹底して修得することになる。他国ではあまり例が無さそうだが、
我が国に於いて無帽の場合の敬礼は、よく見かける右手の挙手ではなく、上半身を一直線に保ち腰も一緒に前方に10°傾斜させるのである。太平洋戦争ものの邦画でご覧になった方もおられるかも知れないが、さらに敬礼の対象が天皇陛下の場合は、10°ではなく45°になる。
45°の敬礼の練習をしたことがあるが、本番は見る機会すらなかった。JALの敬礼は、その45度をも超えており、この多分に時代がかった最敬礼にはある種の可愛げすら感じてしまった。気のせいか局長の方が少し困っているようにも見えるが、最上のお詫びの意思表明になったことだろう。
何よりも今後の対策が問われることになるが、「人材不足が要因の一つかも知れない」と云う趣旨の社長発言を知って、やれやれと思ってしまった。かつてメキシコで、酔っぱらって抵抗するパイロットを皆で機外に引っ張り出して、代わりのパイロットで出発したと云う出来事があった。まさか同じことがJALで起こるとは想像もしなかった。少なくともこれは、人材不足というより規律の緩みだろう。国民の信頼回復は自民だけの課題ではない。最敬礼に見合うマネージメントを頼みたい。未だマイレージが残っている。
2024年5月29日