工房閑話
口入屋
ディズニーランドを除くと浦安がメディアに取りあげられる材料は見当たらない。 が、ここ暫く岸田総理はじめ各党の大物が相次いで,衆議院議員補欠選挙の応援に訪れ、新浦安駅前広場に大勢の市民が集まり、メディアのヘリコプターが飛び交うという椿事が出来した。政治資金規正法違反で辞職した自民党議員のおかげで、全国区級の政治ショーを目の前で見ることができた。
岸田首相は例の和歌山事件の直後に応援に臨み、候補者とともに「暴力に屈しない」と気勢を上げたが、そもそもこの補選に至った原因は、自派議員の政治資金規正法違反という立派な犯罪を犯し、しかも選挙民の負託を裏切ったのであるからして、反省の弁から始めるのが道理だろう。しかるに首相は、頬かむりを決め込むのみならず「今度の候補者は、火中の栗を拾う決意の持ち主」と代わりを売り込む。聴衆も侮られたものだ。
圧巻は4月20日の夕刻、野田、蓮舫両議員の応援演説だった。話術が巧であるのみならず、信念に裏打ちされた言葉に説得力がある。話が具体的で道理が一貫している点も素晴らしかった。残念ながら一歩及ばなかったが、頼りになる現政権批判の受け皿として聴衆の期待が高まっているのが伝わってきた。少なくとも緊張感を欠いた与党への警鐘にはなるだろう。
シカゴ時代の悩みの一つに社員確保があった。そこで餅は餅屋、人材紹介業者(私には、この味気ない呼称より、口入屋の方がしっくり来るのだが)に相談することにした。それでも就労許可を持つ日本人を雇うのは至難の技で、ある米国人を採用した時のこと。提供された情報と仕事の能力に大きな乖離があり、この仁には早々にお引きとり願い、口入屋の責任者を呼んで抗議した。ところが「そうですか。」と他人事のごとき反応。そして「実は、もう一人いいこがいるんですよ・・・」と続けた。これには開いた口が塞がらなかった。今日、その社長と総理の顔が重なって見える。
2023年4月25日