工房閑話

 

 

 

3年目のCOVID-19

 

 年末の混雑前を狙って有馬温泉に逗留した。その起源は神話の時代に遡るが、「7世紀には時の天皇が有馬温泉に行幸した。」と日本書紀に記されているそうだ。有馬温泉興隆の立役者である秀吉が愛でたこの名湯の冷気を吸いながら、露天風呂を存分に堪能して、もう一つの楽しみである夕食に、庭を臨む席に就いた。ところが、向かいの席との間に例の透明なプラスチック板が置いてある。マネージャーに「同居家族につき撤去してもらいたい。」と頼んだところ「これが無いと営業が許可されない。」との回答だった。おかげで折角の晩餐が拘置所の面会になってしまった。前日訪れた人混みでごった返しているJR大阪駅に隣接する賑やかなレストランにプラスチック板は無く、夕方の電車は過密状態で、窓は閉まり、換気装置は作動していなかった。年明けのオミクロン感染爆発への政府対策も、相変わらず理に適っているとは言い難い。

 

 一方、この年始には、若者達(と云っても40前後の働き盛り)と語る機会に恵まれた。国家公務員として国産ジェット機の型式証明に携わったH君がAIの重要性を強調していたが、私の中では従来のITとAIの違いが判然とせず、妙に落ち着かない。既存のITにも学習能力を備えているものもあると思うのだが・・・。この疑問をITコンサルタントのS君に投げかけてみたところ、ひとしきり沈黙して考えを巡らせた後の回答は「現在、AIの定義はありません。」だった。H君は何故このことを認識していないのだろう? 後日この疑問を弁理士のR君に投げかけてみたところ「エンジニアに、そういう問題は無い。」とにべもなかったが、エンジニアの役割をよくよく考えてみて、膝を打った。筋の通る話はおもしろい。

 

 時を同じくして、たまたま、入国を拒否された方からの相談が相次いだ。いずれもINA212(a)(7)(A)(i)(I)に基づく措置で、平たく言うと「移民の疑い有り」となる。入国審査官との面談記録を見る限り、そう判定された原因は明確で、理に適った準備をしてさえいれば入国できただろうと思われる案件だった。この処遇を受けた相談者には同情を禁じ得ないが、幸いなことにアメリカビザも、3年目を迎えるCOVID-19への対応に泥縄・迷走を繰り返す政府の行動哲学とは一線を画して、論理的思考の世界にある。


 

                            2022年1月24日

 

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