工房閑話
グレシャムの法則
「悪貨は良貨を駆逐する」で知られるグレシャムの法則は、高校の教科書に出てきたような気がする。確かに10円玉でも、ピカピカのは取っておいて、使い古された方から出していくという自身の行動に思いが至り、大いに納得した記憶がある。しかし、この学説は必ずしも貨幣の流通に留まらないことは、ずっと後になって知った。
「人類がコロナに打ち勝った証しとしてオリンピックを開催する。」と言う政府の言葉は、国内のコロナを抑え、海外にも救いの手を差し伸べ、五輪開催を実現する決意だと受け取ったが、海外への援助どころか、国内の感染状況は悪化の一途を辿っている。特に大阪に於いては、入院率は10%(10人に一人しか入院できない状態)まで下がり、致死率は世界最悪のインドをも上回るまでに跳ね上がっている。
諸外国で対策が効果を上げているなか、対策の要である検査体制・医療体制の構築及びワクチン接種は一向に進まない。感染の初期、前政権は首相に近い補佐官の「一家に2枚もマスクを配れば国民の不安は一挙に解消できる」と云う提言で、世界のエイプリルフールを沸かせる「アベノマスク」を出現させた。また後継政権についても、先日「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と云う内閣官房参与の発信があった。ここからは官邸の空気が、ひしひしと伝わってくる。専門家のトップも「GO TOは感染を広げる事は無い」と公言していた。グレシャムの法則は奥が深い。
国民は裏切られ続けている。また対立軸に立たされた格好の五輪選手も誠に気の毒と云うほかはない。政府の責任は重い。
2021年5月12日