工房閑話
首相交代
「としまえん」が94年の歴史に終止符を打った。日本一を誇った遊園地も来園者の現象に歯止めをかけることができなかったが、8月31日の最終日には閉園を惜しむ熱心なファンが集まった。経営者はこれを見て、はやまったと思ったかもしれない。時を同じくして安倍首相が、最長在職記録更新後、辞意を表明した。コロナ対応の不手際も相まって、支持率が急落していたが、辞意表明後の世論調査では、政権の実績を評価する声が急騰した。なかでも「評価する」が71%を記録した朝日新聞の世論調査結果に驚かされた。朝日自身はもっと驚いただろう。前首相自身の驚きはさらに大きかったかも知れない・・・。
安倍路線の継承を標ぼうする菅政権があとを襲った。野党は「安倍首相のいない安倍政権」と揶揄しているが、身内にも安倍政権、カン政権などと口を滑らす閣僚がいる。苦労人で売出し中の新宰相の好感度は高く、「まずは解散より、国難とも云うべきコロナ対応を最優先とする。」と明言しながらも、膨れ上がる足元からの圧力と、この機を逃さず解散する誘惑に抗しきれなくなりそうに見える。何しろ民度の高い国民に対するこの程度の背信は、ブレーキにもならないだろうし、靴の底の小石のような、官房長官として重い責任がある前政権の負の遺産の清算問題も、労せずして蓋をしてしまうことができるのである。
思えばこの8年の間に、たいていの政治スキャンダルはニュースにならなくなるほど、政治家・官僚の矜持が地に堕ちた。結果、重要政治課題は解決されず増殖し、次世代に先送りされようとしている。それは原発の汚染水のように、決してアンダーコントロールではなく、いつ漏れ出すかは分からない。あるべき姿に戻すには、非力な野党を責めるだけでなく、有権者には相応の努力が求められている。
2020年9月22日