工房閑話
リニア新幹線
リニア新幹線は時速500㎞で走行し、ゆくゆくは東京・大阪間を1時間で結ぶそうである。開通すると、大阪、名古屋で仕事をし、帰京してからひと仕事と、実に便利な時代がやってくる。
南アルプスの下を突き抜けるトンネル工事が、暗礁に乗り上げているとの新聞報道があった。約25㎞のトンネルらしいが、そもそも地面を時速500㎞で走ると、景色はどのように見えるのだろうか。列車の窓が開かなくなり、窓越しに弁当が買えなくなった時ずいぶんがっかりしたが、車窓からのんびり景色を眺めるのも無しとなると、旅の楽しみも半分になってしまう。海の旅で云うと、潜水艦と客船の違いのようなものだろうか。そうそう、その上、潜水艦の中はウサギ小屋も誇らしくなるくらいに狭い。
大旅行時代の原動力となったジャンボジェット機(ボーイング747)も日本の空で見かけることはなくなりつつあるが、政府専用機も787に代わるそうだ。このジャンボジェットが就航した時、JALのエコノミー席は横9(2,4,3)列だったが、その後10列になった。わずか1列だが、このわずかの差で居心地が大きく変わってくる。前後の間隔も広く、何よりも今ほど混むことは稀で、肘かけを倒して横になることもでき、実に優雅なものだった。これを考えると、今の旅の楽しみは半分に届かないかも知れない。その代わり、ファーストクラスは誠に豪華になっている。しかし、エコノミーにゆとりがあるところに意味がある。
南アルプスはトンネルを疾走するのではなく、季節ごとに移ろう景色を愛でながら進みたい。窓を開けて駅弁と缶ビールが買えると、さらに云うことはない。
2018年10月24日