工房閑話

 

 

トランプ政権始動

   

 新大統領は、ホワイトハウスに収まるや否や、矢継ぎ早に大統領令を発し、「どうせ選挙対策だろう」と思われていた、常識破りの公約を実行する姿勢を見せている。大統領令という超法規的な権限に、想定された使用法とはかなり違っているように思うが、現実は往々にして人類の想像をはるかに超えてしまう。長きに渡る産みの苦しみを経て、前政権が心血を注いで創り上げた成果を、唐突に大統領の一存で廃止する行為が、シリアのあのパルミラの遺跡を破壊した、イスラム国の所業に重なる。

 
 トランプ政権に異を唱える市民の行動力に、民主国家アメリカの精神的資産を見る思いがして勇気づけられる一方、有力企業のCEOは、軒並み政権に迎合している。彼らとて投資家の期待に応えられなければ、その地位は万全ではなく、「背に腹は代えられぬ」のだろうが、米国市民としての矜持はないのだろうか。 アメリカと云う国には、これが同国民かと驚くほど、正反対の二種類の人間がいる。この両者のバランスで、今日の繁栄が築かれたとも言えるが、今そのバランスの真価が試されている。

 

2017年1月29日

           

 

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