工房閑話
高速で迫ってくる一匹の蜜蜂がテレビ画面に大きく映し出されている。軽快な音楽を背景に、花が咲き乱れる公園を嬉々として飛んでいる。これは一体何なんだ・・・。
その正体はイリノイ州で長期政権を誇ったThompson知事の後継者争いに、同じ共和党から立候補したEdgar氏の対抗馬である民主党のHartigan氏のキャンペーン動画だった。同氏は、たまたま息子の友達の叔父さんだったことも手伝って、よく覚えているのだが、「血税をはたいて公園を整備し蜜蜂を喜ばせている。」と云うネガティブキャンペーンである。共和党とその候補者をこき下ろす手法は、日本人である身にとって、とても新鮮だった。また、思わず笑いを誘われる、スグレモノだった。
この米国の持ち味は、トランプ氏の出現により予期せぬ領域に踏み込んだ。さらに、復活を果たした今回の選挙戦に於いては、わずかに残っていた良識の足かせからも解き放たれ、フェイクのデパートと化したトランプ陣営の発信に支持者が酔っているようにも見える。そこには、もはや愛らしい蜜蜂のウイットは無い。
スケールはかなり小ぶりながら、今や我が国は選挙に於いても、お行儀の悪さは本家に引けを取らない。藤原正彦氏が「国家の品格」で「日本は、世界の範となり国家の品格を護らなければならない」と提唱していた20年前を思い出す。
2024年11月29日