工房閑話

 

 

翻訳のこと(その2)

 

 いまや「ファーウエイ」を知らない人は少ないだろう。

 

 初めてお目にかかったのは新聞かテレビだったと思うが、私はこの言葉から連想したのは “ Far Away” だった。ICTで世界を席巻する同社に、誠に相応しい名前だと思った。ところが在日法人の名称は「華為技術日本株式会社 ファーウェイ・ジャパン」らしい。全くの門外漢ではあるが、「華」の日本語表記の「ファー」には靴底の小石のような違和感がある。「ホア」とすべきだろう。敢えて「ファー」とする理由は何だろうか? 本来「華」は上品で高貴な意味を持っており、企業イメージを高める効果があるはずだが、日本語の「ホアウエイ」では、それを語ってはくれない。そこで切れ者が知恵を働かせて、「ファーウエイ」という景気の良い名前を創り上げたのだろう。幸い日本の英語リテラシーが、微妙な不一致を問題にすることはなく、その戦略は功を奏している。

 

 貿易摩擦真っただ中の米国では “ HUAWEI ”であり、発音もはるかに原語に近い。 “ Far Away ” とするようなイメージアップを狙えないどころか、中国企業であることを前面に出すディメリットも少なくないはずだが、米国ではそれがもたらす違和感は靴の中の小石どころではなかったのだろう。
相変わらず些細なことを見逃せない癖は治らない。
          

                            2019年6月20日


 

 

           

 

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