工房閑話

 

 

新春落語会

 

   

桂文枝の新春落語会を聴いてきた。

その昔、我が大学の文化祭で司馬遼太郎に講演をしてもらったことがある。加えて当時既に関西の若者に絶大な人気のあった、三枝(現文枝)を呼ぼうとしたところ、断られた。これが誘因になっているとは思わないが、古典落語ファンとしては、文枝が得意とする新作落語には興味を覚えなかった。邪道だという思いを払拭しきれないのだろうか。ところがどうして、なかなか聴き応えのある高座だった。聴衆を己が世界に見事に引き込んでいる。昨今これができる噺家は、残念ながら他には見当たらない。笑いを取ろうと繰り出すパフォーマンスが、虚しく空回りしてしまうのである。

 

学生時代、クラシックギター部に籍を於いて、4年の時に合奏の指揮をしたが、指導をお願いした先生の指揮棒が、メンバーの音を自在に操っていたのを思い出した。しかし、私はと云うと、自分の指揮に部員の音がついてきているという手応えに乏しく、何とも心もとない思いをした。
弊所ではビザ申請の面接に備えて、これまでも丁寧な説明を行ってきたと云う自負はあるが、果たして空回りはなかったのだろうか・・・。研鑽を重ね、できれば名人の域に近づきたいものである。

 

                              2018年1月10日

                        

 

           

 

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