工房閑話

 

 

瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず

   

 

瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。

 

この中国の故事は、味わい深い人生訓として、2000年の時を経ても些かも色褪せていない。もっとも政治の世界では影が薄い。森友学園に続き加計学園と、瓜田に履を納れ、李下に冠を正しっぱなしである。国民に範を垂れる立場にある以上、道義的責任は問われ、指導者として危機管理のセンスにも疑問符が付くが、本邦に於いては、うやむやなまま幕引きになる公算が大きい。

 

海の向こうの政権にも似たような問題が勃発している。先の大統領選挙にロシアが介入し、トランプ陣営がこれに関与していたと云う疑惑である。捜査を指揮いていたコミーFBI長官をトランプ大統領が突然解任したが、市民の関心も高く、5月17日司法省により事実解明に向け、モラー元FBI長官が特別検察官(Special Counsel)に任命された。政権外から選出され、政府の指示を受けない独立性の高いポジションである。弾劾へ向けてのハードルは低くないものの、権力者の暴走を阻止する仕組みが設けられ機能しており、間違いなく民主国家として一日の長がある。ビザ申請に臨むに当たっても、我が国とは明らかに異なるこの精神は、抑えておくべきである。

 

2017年5月25日

           

 

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