工房閑話

 

 

激動の2017年

 

   

かつて「激動の19XX年も暮れようとしています」というフレーズがあったが、その19XX年も色褪せるような2017年だった。とりわけ、メディアの扱いも
地味だが、軍事費(国防費と云うべきか)の伸びにはずみがつきそうである。
現役宰相のスキャンダル、共謀罪、集団的自衛権、北朝鮮問題、国難突破解散等々の社会情勢がそうさせているのか、戦後一貫して堅持してきた「専守防衛」がいつの間にか空虚になりつつある。一方、視野を広げると、何と言ってもトランプ旋風に煽られ続けた1年だったと言えるだろう。

 

筆者が初めてイスラエルの地を踏んだのは1975年の2月、1973年の第四次中東戦争でエジプト主導のアラブ連合が常勝イスラエルにようやく一矢を報い、ある種の均衡がとれている時期でもあった。当時はヨルダン川西岸もイスラエルが実効支配しており、エリコ、死海、マサダ等、四国ほどの面積の中に歴史が詰まりに詰まっていた。合わせて、当時は建国の活気がみなぎっており、心地良い緊張感を持ったその空気の感触は、今でも鮮明に思い出すことができる。訪問者の目には、パレスチナとユダヤがそれなりに共存できているように見えた。その後の情勢を見るに、当時は最も安定した時期であったと思う。
「エルサレムをイスラエルの首都として認める」というトランプの宣言は、数千年の歴史の確執を経て生まれた微妙なバランスを、一瞬で壊すことになり兼ねない。中東の不安定化は一気に進み、世界平和にも影を落とすことになるだろう。
政権支持者の信頼をつなぎとめるのが目的であるように見えるが、あまりにも乱暴である。

 

多様な顔を持つアメリカであるが、来年は我々が敬愛する方のアメリカを見てみたいものである。

 

                              2017年12月11日

                        

 

           

 

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